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高貴幸齢者  [雑感小文]

 高貴幸齢者 


疎開児童も お爺(じい)さんになりました

疎開児童も お婆(ばあ)さんになりました

信じられない時の迅(はや)さ 

─茨木のり子の詩「疎開児童も」の冒頭のスタンザだ。

本当にそうだと思う。

「戦争が終った!」と、胸の底から突き上げてくる喜びを抑えきれず、夏草の茂る小道を歩いていた足がひとりでに走り出した中学1年生の自分と、こけおどしのような赤茶色の封筒で届いた「後期高齢者医療保険料額決定通知書」なるものに、苦い笑いを口辺に浮かべる老人の自分と、その間に飛び去った70年のなんと迅速だったことだろう。

「光陰矢のごとし」とはよく言ったものだ。むろん現実にはさまざまな転変があった。

親たちがいなくなり、恩を受けた先輩や心をゆるした友の何人かにも、もうこの世では会うことができない。

「そこは涼しい風が吹いていますか」と呼びかけてみたい。

「こっちはご存じのひどい暑さで、おれは相変わらず貧乏で、高貴幸齢者というものになりました」
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