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ホント?肥満は健康・美容の敵 [医学・医療・雑感小文]

肥満はホントに健康・美容の敵か?


◎リンゴ型と洋梨型

世を挙げてのダイエット流行が始まったのは、いつごろだっただろう? 1970年代か? いや、60年代か?

いずれにせよ、世紀を超えて「やせ願望」「肥満恐怖」の時代がつづいているわけだ。

肥満は、健康の敵! 美容の敵! ホントにそうか? 半分ホント、半分ウソである。

肥満には二つのタイプがある。

一つは上半身に脂肪がつくリンゴ型肥満。

上半身肥満、中心性肥満ともいい、手足が細くておなかがでている。糖尿病など生活習慣病になりやすい。

もう一つはお尻や太ももに脂肪がつく洋梨型肥満。健康な女性によく見られる。

同じように太っていても、病気になる太り方と、ならない太り方があるわけで、このことに気づいた医学者が、スェーデンのピヨントルプ、アメリカのキッセバーなど。

彼らの考えは、肥満の実態は皮下脂肪─というもので、日本でも「腹の皮をつまんで、週刊誌の厚さまでなら合格、電話帳だったらアウト」などといわれていた。

これを「まったく逆!」と指摘したのが、大阪大学医学部第2内科のチーム(松澤佑次教授=当時)である。


◎メタボという名の病態

リンゴ型肥満の人の腹部をCTの輪切り画像で見たら、皮下脂肪はごく少ないが(だから腹の皮をつまむと薄い)、腹腔(腸間膜、肝臓、腎臓など内臓の間)にどっさり脂肪がたまっていることがわかった。

1987年、「内臓脂肪症候群」という病態を提唱した。

同じころ、上半身肥満、耐糖能異常、高脂血症、高血圧といった要因が重なると、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性の病気の罹患率が高くなることに着目した、いずれもアメリカの医学者が、88年に「シンドロームX」、89年に「死の四重奏」―と名づけた概念を発表した。

「だが、内臓脂肪に重点をおいたのは、われわれだけで、これはCTスキャンが日本でよく使われていた機器だったことが幸いした」と松澤先生。

やがて、この内臓脂肪型肥満という状態を欧米の専門家も認めるようになった。

「それまで彼らはBMI(肥満指数=体重・キロを身長・メートルの2乗で割った数値。22が理想指数)が30を超えると心臓病などのリスクが高くなると、肥満の程度ばかりに重点をおいていた。

われわれは、問題は肥満の程度ではない、質=内臓脂肪なんだと主張してきて、それを彼らも認めてくれたのが、1990年代の終りごろです」。

そして「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」という概念が世界的に成立した。

いまやだれでも知っているように、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満が基盤としてあって、それに高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常が二つ以上加わったもの。

ひらたくいえば、腹の中に脂肪がたっぷりたまっていて、そこへもってきて血圧が高かったり、糖尿病のケがあったり、中性脂肪が多かったり…といった悪条件が二つ以上重なるとヤバイよ、というわけ。

2005年4月、日本内科学会など8学会は、日本独自の(日本人の体格に合わせた)メタボリックシンドロームの診断基準を発表。

松澤佑治・日本肥満学会理事長(住友病院院長)が診断基準検討委員長を務めた。

そして2008年4月からは、メタボリックシンドロームの該当者・予備群をへらすための、40~74歳を対象とする「特定健康診査(特定健診)」、いわゆる「メタボ健診」が実施されるようになり、「メタボ」という略語が全国民的に定着した。

そんなわけで、ひとくちに「肥満」といってもやっかいなのは内臓脂肪のほうで、皮下脂肪はまったく問題ない。


◎「小太りじいさん」は長生きだ

半面、やせすぎにも大いに問題がある。

無理なダイエットをつづけていると、栄養失調、貧血、骨粗しょう症、生理不順を招き、血液中のコレステロールが減少し、脳出血を起こしやすく、肌の色つやが悪くなり、老けてしまう。

東京都老人総合研究所が行った約2000人の高齢者の追跡調査によると、男女ともに「やせ」グループの死亡率が最も高く、次が「太りすぎ」グループ、「普通」グループという順で、最も長生きしたのは「やや肥満」グループだった。

元気に長生きするのは「小太りじいさん・ばあさん」で、ほんとうに魅力があるのは「ぽっちゃり娘・ふっくらおばさん」。

不適切なダイエットこそ美容と健康の大敵なのだ。
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