SSブログ

赤ちゃんの認識力 [医療小文]

赤ちゃんは生後4カ月から“見た目と音”で素材認識

 言葉を獲得する前の赤ちゃんが、見ること、聞くことを通して、「木」や「金属」といった身近にある物の素材を認識していることを、中央大などの研究グループが実験から明らかにした。

 物の素材の見た目と音の関係の理解は、生後4カ月から発達し、経験とともに処理できる素材の種類が増えていくという。

 今回の研究により、赤ちゃんが多様な感覚を通して、物体に関わる知識をどのように獲得していくのか、そのメカニズム解明につながると期待されている。研究結果は英国の科学誌Scientific Reportsに掲載された。

 素材の見た目と音が一致すると脳血流量が増加

 論文を発表したのは、中央大、日本女子大、鹿児島大--の研究者。

 ナイフやフォークなどの食器が金属素材でできているのか、あるいはプラスチックにメッキ加工されたものなのかを見分けるためには、見た目の光沢感だけでなく、物体をたたいた時に出る音も重要な手がかりとなる。

 グループは、生後4~5カ月児と6~8カ月児計32人に、木や金属をたたく音とその材質の見た目が一致した映像と、一致しない映像をそれぞれ見せ、脳の血流量を観察した。

 具体的には、脳が活発化すると酸素を必要とし、血中の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)が増えることから、oxy-Hbの値を測った。

 その結果、木の素材の場合は、木をたたく音と材質の見た目の映像が一致すると、4~5カ月児、6~8カ月児とも脳の右半球の側頭領域が活発化した。

 一方、金属をたたく音と見た目の映像が一致した場合、6~8カ月児は脳の活動量が増加したが、4~5カ月児では全く活動がみられなかった。

 木をたたく時に出る「ポコポコ」という音とともに金属をたたく映像を流すなど、音と見た目の映像が一致しない場合は、どちらの素材でも脳活動が上昇しなかった。

 また、左半球の側頭領域では、音と見た目の映像が一致、不一致どちらのケースでも、血流量の増加は見られなかった。

 これらの結果から、乳児が視覚と聴覚を通して物体の素材を認識する際には、右半球の側頭領域が関わっていると考えられるという。

 このような脳内での処理は、木の素材に対しては生後4カ月から、金属の素材では6カ月から見られ、素材によって時期が異なることも分かった。

 なぜ右半球で活動したのか。

 今回の研究を実施した中央大学研究開発機構の氏家悠太機構助教によると、成人の場合は、ある音と、その音から連想される視覚イメージとの連合には脳右側の上側頭溝(じょうそくとうこう=視覚と聴覚の結びつきに関わる脳の側頭葉にある溝の一つ)が関わっていることが分かっており、乳児でも同じメカニズムが働いている可能性が考えられるという。

 また、これまでの研究から、赤ちゃんが金属の光沢感を知覚できるのは7カ月以降であることが分かっている。

 今回、金属の音と見た目の映像が一致しても、4~5カ月児で脳活動が見られなかったのは、これが理由の一つではないかと分析している。

 氏家機構助教は「赤ちゃんは言葉を獲得する前の段階から、物の素材の見た目と音を連合できる能力を持っていることを証明できた。

 今後は、素材がどれだけ身近かどうかが、見た目と音のつながりを獲得する時期にどのように影響するのかを調べたい」と話している。

「毎日新聞デジタル版 医療プレミア」による
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。