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「予後」の誤用 [それ、ウソです]

それ、ウソです(29)

「予後」の誤用
「向こうの病院の話だと、ごく最近起きた発作の予後が悪かったんじゃないかと言ってるんですが、私もそう思います。予後さえちゃんとケアしていれば、こんな突然に亡くなることはなかったと思うんですがね」(火曜サスペンス劇場「突然、夫に死なれて」=日本テレビ1990年9月18日)

 心筋梗塞で急死した男性の妻に、かかりつけの医師が言った台詞だ。

「向こうの病院」というのは、男性が救急車で運ばれ、死亡した病院のことだ。

 この「予後」という言葉の使い方はおかしい。

 一般的にはこのように「病後」の意味で使われることが多いが、それは俗な語法で、医学的には正しくない。

 医学用語の「予後」は、「病気の経過についての医学的な見通し」のことで、心配のない病気だったら「予後はいい」、治りにくい病気だと「予後はあまりよくない」といったふうに用いる。

 素人が間違ったのなら別に目くじら立てることはないが、仮にも医者の台詞としてこんな誤用をしゃべらせてはいけない。

 しかし、心筋梗塞についての、この医師の話の内容は、まったく正しい。

 心臓に血液を供給する血管=冠動脈が、動脈硬化によって狭くなったために起こるのが狭心症で、血管がさらに狭くなって血栓が詰まってしまうのが心筋梗塞。

 まとめて虚血性心疾患と呼ばれる。

 狭心症の発作はたいてい10分かそこらで治まる。

 血管拡張薬のニトログリセリンを舌の下にふくむとすっと楽になる。

 心筋梗塞はそうはいかない。発作がえんえんと続き、ニトロも効かない。

 狭心症のうち心筋梗塞へ移行しやすいものを不安定狭心症というが、不安定狭心症と心筋梗塞の境はなかなかつけにくかった。

 だが、これはどちらも冠動脈に急速に血栓ができる共通の疾患である─という説を、1992年にアメリカの心臓病学者、フスターが提唱した。

 以来、虚血性心疾患のなかの不安定狭心症と心筋梗塞を「急性冠症候群」と呼ぶようになった。

 急性冠症候群の多くは、胸部の締めつけ感など何らかの前駆症状がある。

 にもかかわらず、仕事が忙しいなどの理由で病院に行かない人が多い。

 胸部に違和感を覚えたら、必ず心臓専門医の診察を受けよう。

 暴飲暴食を避け、適度な運動を心がけるなど、メタボリック・シンドロームを解消するよう生活習慣を改善しよう。

 突然の激しい胸の痛みは、命の危険を知らせるSOSだ。

 ためらわずに救急車を呼ぼう。
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