いびきの話 [医学・医療・雑感小文]
いびきの話
某月某日、某新聞で、いびきについて、印象的な文を二つ、読んだ。
一つは、ある生命保険会社が、全国の夫婦に対して行ったアンケートで、夫からみた妻の悪い点のトップが「いびき・寝言」(4・8%)だったという記事だ。
もう一つは、神奈川県平塚市の女子中学生が、投稿欄に寄せた「忘れないよ! じいちゃん」と題した文だ。
祖父母の家に遊びに行った日、電気を消した部屋でテレビを見ていた。
夜ふけ、隣で寝ていた祖母がいびきをかき始めた。
少しして祖父が目を覚ました。
テレビがうるさいの? と聞いたら、大丈夫だよと、祖父は答えて、こう言った。
「ばあちゃんはネ、毎日こうやって、いびきをかいて寝るんだよ。でも、じいちゃんは、このいびきがあるから毎日ぐっすり寝れるんだよ。―略―こうやって起きて、ばあちゃんがいびきをかいていると安心するんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、なぜか涙があふれた。
「じいちゃん! 私はこのときの、この数分間の会話を一生、忘れないからね。ありがとう。」
──投稿を読ませてもらった、じいさんの目にも涙がにじんだ...。
妻のいびきを「悪い点」のトップにあげた夫たちも、いずれは「ばあちゃんのいびき」に「安心してぐっすり眠れる」ようになるだろうか。
むろん、いびきをかくのは妻だけではない。
夫のほうが、ずっと多い。
ある製薬会社が行ったインターネット調査(全国の20代~60代の主婦158人対象)によれば、「夫がいびきをかく」と答えたのは全体の9割。
「ほとんど毎日」が48%、「週2、3回」が19%。
「夫のいぴきを静かにさせたいと思うか」という質問には、33%が「ぜひ静かにさせたい」、49%が「静かにさせたい」と答えている。
いびきは、多くの場合、口を開け、鼻と口の両方で呼吸したとき起こりやすい。
口を開ける原因の第一は鼻やのどの病気。
蓄膿症とか鼻たけなどがあると、鼻の空気の通りが悪くなるので苦しくて口を開いてしまう。
第二の原因は体質。
睡眠中は起きているときに比べると、だれでも鼻の粘膜がはれて、呼吸の空気量が減る。
これは内臓の働きを抑え、体を休めるための正常な調節で、自律神経の作用(副交感神経が緊張する)によるものだ。
この調節に個人差があり(体質的に副交感神経の緊張が強過ぎるため)、鼻の粘膜が必要以上にはれてしまい、鼻がつまり、口からも呼吸する。
深酒のあとや運動などで体が非常に疲れたときもよくいびきをかく。
これにも自律神経が関係している。
飲酒時や運動時には交感神経が活発に働くので、睡眠時には反動的に副交感神経が緊張し、鼻粘膜がいつもより大きくはれるのだ。
第三の原因が、いびきの途中で呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群だ。
この病気の診断基準が作成されたのは1976年。
診断基準の第一条件は、7時間以上の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上(または1時間の睡眠に5回以上)も現れること。
子供では夜尿、寝ぼけ、大人では夜間頻尿が起こる。
深い睡眠が取れず、脳の酸欠状態になるため、時間的には十分寝たつもりでも朝起きたときに熟睡感がない。
頭が重く、鈍い頭痛がする人も多い。
昼間むやみに眠く、頭がぼんやりしてうまく働かない。
仕事中や授業中に眠ってしまう。
集中力がなくなる。仕事に差し支えるし、学校の成績が下がってくる。
血圧が高くなったり、EDを招くこともある。
ホルモン分泌のリズムが乱れるためだ。
子供では成長障害が起こる。
適切な治療を受けて、病気が治ればそうした症状もなくなる。
耳鼻科、精神科、呼吸器科などでいろいろな治療法が試みられているが、一押しは「C-PAP(シーパップ)」という器械を用いる方法。
横綱白鵬の睡眠時無呼吸症候群も、これで軽快したそうだ。
某月某日、某新聞で、いびきについて、印象的な文を二つ、読んだ。
一つは、ある生命保険会社が、全国の夫婦に対して行ったアンケートで、夫からみた妻の悪い点のトップが「いびき・寝言」(4・8%)だったという記事だ。
もう一つは、神奈川県平塚市の女子中学生が、投稿欄に寄せた「忘れないよ! じいちゃん」と題した文だ。
祖父母の家に遊びに行った日、電気を消した部屋でテレビを見ていた。
夜ふけ、隣で寝ていた祖母がいびきをかき始めた。
少しして祖父が目を覚ました。
テレビがうるさいの? と聞いたら、大丈夫だよと、祖父は答えて、こう言った。
「ばあちゃんはネ、毎日こうやって、いびきをかいて寝るんだよ。でも、じいちゃんは、このいびきがあるから毎日ぐっすり寝れるんだよ。―略―こうやって起きて、ばあちゃんがいびきをかいていると安心するんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、なぜか涙があふれた。
「じいちゃん! 私はこのときの、この数分間の会話を一生、忘れないからね。ありがとう。」
──投稿を読ませてもらった、じいさんの目にも涙がにじんだ...。
妻のいびきを「悪い点」のトップにあげた夫たちも、いずれは「ばあちゃんのいびき」に「安心してぐっすり眠れる」ようになるだろうか。
むろん、いびきをかくのは妻だけではない。
夫のほうが、ずっと多い。
ある製薬会社が行ったインターネット調査(全国の20代~60代の主婦158人対象)によれば、「夫がいびきをかく」と答えたのは全体の9割。
「ほとんど毎日」が48%、「週2、3回」が19%。
「夫のいぴきを静かにさせたいと思うか」という質問には、33%が「ぜひ静かにさせたい」、49%が「静かにさせたい」と答えている。
いびきは、多くの場合、口を開け、鼻と口の両方で呼吸したとき起こりやすい。
口を開ける原因の第一は鼻やのどの病気。
蓄膿症とか鼻たけなどがあると、鼻の空気の通りが悪くなるので苦しくて口を開いてしまう。
第二の原因は体質。
睡眠中は起きているときに比べると、だれでも鼻の粘膜がはれて、呼吸の空気量が減る。
これは内臓の働きを抑え、体を休めるための正常な調節で、自律神経の作用(副交感神経が緊張する)によるものだ。
この調節に個人差があり(体質的に副交感神経の緊張が強過ぎるため)、鼻の粘膜が必要以上にはれてしまい、鼻がつまり、口からも呼吸する。
深酒のあとや運動などで体が非常に疲れたときもよくいびきをかく。
これにも自律神経が関係している。
飲酒時や運動時には交感神経が活発に働くので、睡眠時には反動的に副交感神経が緊張し、鼻粘膜がいつもより大きくはれるのだ。
第三の原因が、いびきの途中で呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群だ。
この病気の診断基準が作成されたのは1976年。
診断基準の第一条件は、7時間以上の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上(または1時間の睡眠に5回以上)も現れること。
子供では夜尿、寝ぼけ、大人では夜間頻尿が起こる。
深い睡眠が取れず、脳の酸欠状態になるため、時間的には十分寝たつもりでも朝起きたときに熟睡感がない。
頭が重く、鈍い頭痛がする人も多い。
昼間むやみに眠く、頭がぼんやりしてうまく働かない。
仕事中や授業中に眠ってしまう。
集中力がなくなる。仕事に差し支えるし、学校の成績が下がってくる。
血圧が高くなったり、EDを招くこともある。
ホルモン分泌のリズムが乱れるためだ。
子供では成長障害が起こる。
適切な治療を受けて、病気が治ればそうした症状もなくなる。
耳鼻科、精神科、呼吸器科などでいろいろな治療法が試みられているが、一押しは「C-PAP(シーパップ)」という器械を用いる方法。
横綱白鵬の睡眠時無呼吸症候群も、これで軽快したそうだ。
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