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呑気症候群 [医学・医療・雑感小文]

呑気症候群

「切歯扼腕(せっしやくわん)=歯ぎしりをし、腕をにぎりしめて、くやしがること」─中国の古典「史記」に最初に用いられた成語らしい。

「おぼしきこといはぬは腹ふくるるわざなれば…=思うこと、言いたいことを言わないのは、腹がふくれるみたいで気持ちのわるいことだ」─こちらは「徒然草」第一九段に出ている。

 二つが合わさった「かみしめ・呑気(どんき)症候群」という現代病がある。

歯がみし、かみしめるくせがあると、空気をたくさん飲み込み、本当に腹がふくれてしまうばかりか、頭痛、腹痛、食欲不振、のどの異常感、耳鳴り、目の痛み、腕のしびれなどさまざまな症状が現れる。

この病気に詳しい小野繁・ベイサイドさちクリニック院長(東京医科歯科大客員教授)は、

「そうした空気嚥下(えんげ)によって起こる症状は、一般によくみられるもので、病気のようで病気ではない。原因はストレスなのです」。

 現代に生きるのは、古人の知らなかった難儀を生きることでもあるようだ。

腹にたまったガスの70%ぐらいは、口からのみ込んだ空気で、30%が腸内で生じた発酵ガスだ。

なぜ、それほど空気嚥下(えんげ)が多いのか。一因は早食いだが、最大の原因は緊張によるかみしめだ

固唾(かたず)をのむ─という表現のとおり、緊張して歯をかみしめると嚥下反射が起こり、唾液(だえき)と一緒に大量の空気をのみ込んでしまう。

胃がふくらみ、軽い不快感が生じる。

会議などで長く座っていると腹にガスがたまるのは、腸内で発酵したのではなく、会議中に無意識に空気をのみ込んだためだ。
 これが日常化し病的になったのが、かみしめ・呑気(どんき)症候群で、空気が胃の上のほうにたまると、横隔膜一枚をへだてた心臓が圧迫されて重っ苦しくなる。

肋間(ろっかん)神経が刺激されるので痛みを感じ、狭心症ではないかと内科に行き、異常なしといわれ、外科に行っても何も出てこない。

当然だ。

ガスで圧迫されてるだけなのだから。

同様のことが、あちこちで起こるのが、かみしめ・呑気症候群だという。

 判別診断

 歯をかみしめ、空気をたくさんのみ込んだために体のあちこちにさまざまな症状が起こるのが、「かみしめ・呑気(どんき)症候群」─ストレスが原因の〝病気でない病気〟だ。

が、そうした症状が、かみしめ・呑気症候群でない場合もむろんたくさんある。

「それを見分けるには、まず身体医学的に正しい診断をしなければいけません」と、小野繁先生。

「最も重要な前提条件は、身体医学的な病理があるかないか、きちんと確かめることです。

例えば、首の症状がある人だったら、首に神経学的な問題はないか調べる。

それには整形外科的な知識がないといけないし、耳鼻科的な知識も必要です。

内科的にも、整形外科的にも、眼科的にも、その他も何ら問題がないにもかかわらず、症状があるのが、かみしめ・呑気症候群で、その大本にはストレスがあるのです」

 ちなみに、同じように緊張や不安で空気を吸い込み過ぎて起こるのが、過呼吸症候群。こちらの空気は、肺に入る。

「吸う」のと「のみ込む」のとの違いだ。
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