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睡眠時無呼吸症候群の諸問題 [医療小文]

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は覚醒中もつづく? 体位との関係は?

 信州大学内科学第一教室の町田良亮氏らは、強制オシレーション法(FOT)を用いて閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の覚醒中の呼吸抵抗を体位別に検討。

 起きているときでも、体位を変えることでOSASの重症度に応じた呼吸抵抗の増大が生じる可能性があることを見いだし、第58回日本呼吸器学会で検討結果の概要を発表した。

 覚醒中の体位別呼吸抵抗とOSAS重症度との関連を検討

 FOTは非侵襲的に呼吸抵抗を測定できる検査法で、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の患者に対する施行例が多数報告されている。

 また、睡眠呼吸障害を呈する患者において、ネーザルマスクを介してFOTを装着し、睡眠中の気道閉塞を評価した報告がある。

 町田氏らは、覚醒中のOSAS患者に対して異なる体位でFOT検査を行うことで、中枢気道の呼吸抵抗を評価できるかどうかを検討した。

 対象は、終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)検査でOSASと診断され、呼吸機能検査で換気障害が認められなかった35例。

 覚醒している状態で坐位、仰臥位、左側臥位を取らせ、それぞれの体位でFOT検査を実施。

 呼気時と吸気時の5Hz、20Hzでの呼吸抵抗(R5、R20)、両者の差(R5−R20)、5Hzでの呼吸リアクタンス(X5)の値を求め、PSG検査で得られた無呼吸低呼吸指数(AHI)との関連を調べた。

 対象35例におけるOSASの重症度別の内訳は、軽症(AHI 5〜15)8例、中等症(同15〜30)13例、重症(同30以上)14例。男性27例、女性8例と男性が多く、平均年齢は61歳。

 平均BMIは26.82で、同25以上の肥満者が約7割(25例)を占めた。

 平均AHIは29.46だった。

 仰臥位、側臥位におけるR5、R20とAHIが相関

 FOT検査の各測定項目(R5、R20、R5−R20、X5)とAHIとの関連を分析した結果は次の通り。

 坐位においては、いずれの測定項目についても、呼気時と吸気時の平均値とAHIとの間には有意な相関は見られなかった。

 一方で、仰臥位で測定した平均R5、吸気時R5、吸気時R20は、それぞれAHIと有意な相関を示した。

 左側臥位では、吸気時R5と吸気時R20においてAHIとの有意な相関が確認された。

 また、睡眠中に仰臥位を取っている時間帯に限定して算出したAHI(仰臥位中AHI)と、FOT検査の各測定値との関連についても検討した。

 その結果、仰臥位中AHIは覚醒中の仰臥位時平均R5、平均R20、および坐位時平均R5、平均R20と有意な相関を示した。しかし、仰臥位中AHIと坐位時平均R5−R20との間には、有意な相関は認められなかった。

 OSASスクリーニングへの応用には健康人との比較試験が必要

 以上から、町田氏は「坐位時の各呼吸抵抗指標とAHIとの間には相関が見られなかったが、仰臥位または側臥位を取った際の呼吸抵抗指標の一部はAHIと有意な相関を示した。

 このことから、覚醒中でも体位を変換するとOSASの重症度に応じて呼吸抵抗が増大することが示唆された。

 また、吸気時の呼吸抵抗がAHIと特に強い相関を示したことは、吸気相における上気道閉塞を原因とするOSASの病態を反映しているとも考えられた」と結論した。

 なお、FOT検査において、R5は気道系全体、R20は上気道から中枢気道、R5−R20は末梢気道の抵抗をそれぞれ示すといわれている。

 これを踏まえて同氏は「今回、R5、R20がR5−R20に比べてAHIと強い相関を示した。

 このことはOSASの病態の主座が中枢気道にあることを反映している可能性がある」との考察を加えた。

 同氏は「今後、FOTによる呼吸抵抗測定結果を健康人とOSAS群で比較する検討を行い、群間で有意差が認められれば、OSASのスクリーニングを非侵襲的かつ短時間で行えるようになるかもしれない」と展望した。(長谷部弥生)
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