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引っぱるな! [医学・医療・雑感小文]

引っぱるな!

甲子園の熱闘をテレビ観戦していて、子どものころの草野球を思い出した。

いつもライトで9番だった。

めったに飛んできたことのないフライをとりそこねて突き指したことがあった。

ベソをかいたら、セカンドのトシローが、タイム! と叫び、駆け寄ってきて、いためた指を引っぱってくれた。

あのころの(もしかしたら、いまでも)突き指は引っぱるものだった。

あの〝応急処置法〟はどこから生まれたのだろう。

たぶん、「指を突いたのだから縮んだのだろう。引っぱってやれば元に戻るだろう」と単純に考えたのだろう。

だが、突き指を引っぱると、かえって症状を悪化させることが多いと、整形外科医は注意している。

突き指には、ねんざ、打撲、脱臼(きゅう)、靱帯(じんたい)の断裂などさまざまな傷害が含まれている。

たいていは軽いねんざか、打撲だからほっておいても大丈夫だ。

大丈夫でないのは、指先を伸ばす腱(けん)が切れたり、脱臼したり、靱帯が切れたりしたときだ。

そういう状態の指を引っぱるとどんなことになるか。

説明するまでもあるまい。

突き指、引っぱるな!
タグ:突き指

戦争と体格 [雑感小文]

 戦争と体格

「ぼくの身体が小さいのは、小学校五、六年から中一ぐらいまでのあいだに、生の牛乳を飲んだことがないからである」と作家、小林信彦氏が書いていた。

昭和7年生まれの作家の成長期は、戦中戦後の食糧難の時代と重なった。

良質のたんぱく質とカルシウムの摂取不足が、低身長の原因──という認識だろう。

体格のベースになるのは遺伝形質だが、栄養にも大きく支配される。

小林さんと同年のわれわれは、男も女も一体に小柄で、同窓会の会場でぽこっとへこんで見える一群は、わが級友たちだ。

育ち盛りに牛乳はおろか肉も卵もめったに拝めなかった結果が、それだ。

なかには長身の男もいるが、その彼も「おやじのほうが大きかった」と言う。

一般に父親よりも息子は背が高いのが普通だと思うが、そうではない者がわれわれには多い。

「戦中・戦後の粗食が、私の体に動脈硬化をつくらなかった」とは、われわれの親の世代に当たる日野原重明先生の言葉だが、おかげで子ども世代は成長が遅れた。

戦争後遺症の一種だろう。

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