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生体リズムと睡眠 [医療小文]

  年をとると、寝つきがわるい(入眠困難)、夜中にしばしば目覚めてトイレに立つ(中途覚醒)、朝早く目覚める(早朝覚醒)などの睡眠障害が増える。

 そのため日中にぼんやりしていたり、眠気のためしばしば昼寝をすることになる。

 そうした睡眠障害の原因はさまざまで、夜間の頻尿、睡眠時の呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)、足の不随意な動き(むずむず脚症候群)、関節痛などの身体的要因、神経症やうつ病などの精神的な要因が挙げられている。

 そうした身体的、精神的要因がない場合も睡眠障害が起こることがある。

 睡眠・覚醒リズムの障害だ。

 ヒトや動物では睡眠・覚醒、体温などさまざまな生体機能が約一日を周期としていて、そのリズム(サーカディアンリズムという)は、脳にある〃生体時計〃によって調節されている。
 
 健康な人は、昼夜の明暗を区別する、昼間に仕事をする、他人と接触する、食事をとる、時刻を知る...というような手がかり(同調因子)をもとに毎日、24時間の生体リズムをつくっている。

 高齢になると、生体時計がうまく作動しなくなるため、生体リズムが崩れて、睡眠障害が起こりやすいと考えられている。

 高齢者、とくに認知症の老年者にみられる睡眠・覚醒リズムの障害は、極端な場合には昼夜がまったく逆転して、夜に起きだし昼間は眠っている。

 あるいは一日中眠ったり、覚めたりを繰り返したり、反対に一日中ほとんど眠っていないといった状態がみられる。

 このような睡眠障害にはしばしば徘徊(はいかい)をしたり、大声でどなったり、他人をなぐったりするなどの乱暴な行為、あるいはせん妄(一時的に精神が興奮・錯乱する状態)がみられる。

 そうした睡眠・覚醒障害が起きるのは、生体時計の機能が十分働かないためだ。

 社会生活の第一線から退いた高齢者、とくに認知症の人は、他人と接したり、体を動かす機会が減り、またあまり外に出ずに家にいると十分な明るさが得られず、さらに視力などが低下すると、よけい明暗が区別しづらくなる。

 治療法としては、周囲の人が、そうした人たちと接触する時間を多くし、話しかけたり、一緒に作業するなどの手段を用いて働きかける方法や、非常に明るい光を浴びる高照度光療法などがある。

 家庭で実行できることも多く、効果を上げているという。
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