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花かぶれ・はぜまけ [医療小文]

 うるわしの五月、はじまる。

 花屋の店頭にいろいろな花の鉢植えが並べられてある。

 その美しいかれんな花たちが、皮膚炎の原因になることがある。

 よく知られている一つは、プリムラ・オブコニカ(西洋桜草)。

 葉や茎から分泌されるプリミンという刺激性の物質が皮膚につくと、人によってはひどくかぶれる。

 チューリップにもかぶれ成分があり、オランダでは栽培者の職業病になっているそうだ。

 花屋の人が、フリージアにかぶれて仕方がないので扱うのをやめたという話もある。

 アロエ、キク、ライラックなどもかぶれを起こしやすい成分を含んでいる。

 ウルシやハゼなど揮発成分のあるものだと、そばを通っただけでもかぶれる人がいる。

 子どものころ、ハゼにかぶれたことがある。

 そのとき、祖母が教えてくれた。

「ウルシにゃ負けても、うぬにゃ負けん!」

 こんど、ハゼの木のそばを通るときは、そうおらんで(叫んで)通ればよい、と。

 以来、"ハゼ負け"はしなくなった。

 ハゼ、ウルシかぶれに暗示の力が強く作用することは、池見酉次郎・九大名誉教授(心身医学)が実験的に証明している。

 ハゼやウルシにひどくかぶれるという高校生13人に目かくしをして、右手(または左手)には、かねて恐れているハゼ(またはウルシ)の葉を、

「これは栗の葉だ」と言ってすりつけた。

 もう一方の手には、無害な栗の葉を、

「これはハゼ(またはウルシ)だ」と告げてすりつけた。

 結果、そのなかの9人が、栗をハゼ(またはウルシ)だといってすりつけた方にだけ皮膚炎が現われ、ハゼ(またはウルシ)を栗だといつわってすりつけた方にはなんの変化もみられなかった。

 残りの4人のなかの2人は両腕ともかぶれた。(池見酉次郎著『心療内科』=中公新書による)

 話を戻すと、花かぶれは、触れさえしなければ大丈夫だ。

 だから最上の予防法は「触らない」こと。

 手入れをするときは手袋をはめ、終わったら手や顔を洗おう。

 かぶれは、医学用語では接触性皮膚炎。

 表皮に対する多種多様な物質の刺激による非アレルギー性、あるいはアレルギー性の変化で起こる。

 非アレルギー性の代表がおむつかぶれ。

 化粧品かぶれや花かぶれは、アレルギー性だ。

 治療はむろん皮膚科──。
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