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ツバは薬? [医学・医療・雑感小文]

  ツバは薬?

唾液中のロダン塩やリゾチームという物質には細菌をやっつける作用がある。

だが、あらゆる細菌に対してオールマイティに効くわけではない。

その守備能力を将棋の駒にたとえると、歩か香車といった程度のものらしい。

まずいことには、唾液の中には細菌の活動を促す物質も含まれている。

幸い口の中ではほとんど不活性だが、いったん外に出ると、細菌の活動を7割がたスピードアップさせる。

つまりツバというのは、口の中にあるときはなかなかのスグレモノだが、口の外に出ると効力が激減するだけでなく、傷口などの有害菌の活動を活発にする。

だからケガをしたとき、自分の口をじかに傷口に当てて、傷を吸ってきれいにするのは理にかなっている。

が、指先にツバをつけて傷口に塗るのは有害無益。

まして他人の傷にツバをつけてやるなんて不衛生以外のなんでもない。

ケガをしたら、傷口を水でよく洗い、シートなどでぴったり覆うのが一番。

痛みもなく、治りも早い。

今の正しいキズケアは、「消毒しない、乾かさない」である。
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鎮痛呪文 [雑感小文]

 鎮痛呪文 

三つか四つのころの思い出─。

手足を何かにぶつけていたがっていると、父が、

「キンジョーサイサイ、ネコ1匹の子、痛いところにイタチのクソを塗りつけたまえ」と唱えながらさすってくれた。

唱え終わって、ふーっと息を吹きかけられると、痛みが薄れるようだった。

亡父は、福岡県築上郡の出身で、いなか寺(浄土真宗本願寺派の末寺)の住職だったが、あのおかしなまじないは、どこの土俗だったのだろう。

キンジョーサイサイは「謹上再拝」の訛語だろう。

謹上再拝 ①神を拝むときにいう語。謡、蟻通「─、敬つて白す」②書状の末尾に添える語。と、『広辞苑』に─。

ネコ1匹の子、イタチのクソは、なんのこっちゃ?

この奇妙な呪文の由来をご存じのかたがおられたらご教示ください。

呪文といえば、昔はちょっとしたケガなら、「ツバキ、万病の薬」と唱えながら傷口にツバをつけたものらしい。

今でも小刀など使いそこねて、「痛ッ!」という瞬間、反射的にその指を口に持っていくが、一体、唾液は傷薬の代用品になるのか?

なるらしい。

唾液に含まれる微量の青酸と硫黄がくっついたロダン塩とかいうものや、リゾチームという酵素が、細菌をやっつける働きをするようなのだ。
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突き指余談 [雑感小文]

突き指余談

突き指は引っぱってはいけない。

重大な損傷がある場合はもちろんのこと、軽いねんざや打撲も引っぱってはいけない。

ねんざの大部分は靱帯(じんたい)がねじれたり、傷ついたりしたものだ。

引っぱれば靱帯はさらに傷んでしまう。もんだり、さすったりするのも感心しない。

突き指をしたら、冷たい水か氷を入れたビニール袋で冷やすのが一番だ。

そのほかのことは何もせず、安静にしておく。

軽いものなら間もなく痛みが消えるだろう。

痛みがいつまでも取れなかったり、腫れてきたり、指先が曲がったままだったりしたら、急いで整形外科の治療を受けなければいけない。

余談だが、『広辞苑』の編者、新村出博士はキャッチボールをやったことがなかったのではないか。

『広辞苑』第一版(昭和30年発行)には、「突き指」の項目がない。が、44年の第二版以降の各版には、

「突指 外力によって指先を突かれたために起る症状。指先と付近の関節の腫脹・疼痛・運動障害を伴う」とある。

『広辞苑』らしい生硬な語釈だ。
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引っぱるな! [医学・医療・雑感小文]

引っぱるな!

甲子園の熱闘をテレビ観戦していて、子どものころの草野球を思い出した。

いつもライトで9番だった。

めったに飛んできたことのないフライをとりそこねて突き指したことがあった。

ベソをかいたら、セカンドのトシローが、タイム! と叫び、駆け寄ってきて、いためた指を引っぱってくれた。

あのころの(もしかしたら、いまでも)突き指は引っぱるものだった。

あの〝応急処置法〟はどこから生まれたのだろう。

たぶん、「指を突いたのだから縮んだのだろう。引っぱってやれば元に戻るだろう」と単純に考えたのだろう。

だが、突き指を引っぱると、かえって症状を悪化させることが多いと、整形外科医は注意している。

突き指には、ねんざ、打撲、脱臼(きゅう)、靱帯(じんたい)の断裂などさまざまな傷害が含まれている。

たいていは軽いねんざか、打撲だからほっておいても大丈夫だ。

大丈夫でないのは、指先を伸ばす腱(けん)が切れたり、脱臼したり、靱帯が切れたりしたときだ。

そういう状態の指を引っぱるとどんなことになるか。

説明するまでもあるまい。

突き指、引っぱるな!
タグ:突き指
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戦争と体格 [雑感小文]

 戦争と体格

「ぼくの身体が小さいのは、小学校五、六年から中一ぐらいまでのあいだに、生の牛乳を飲んだことがないからである」と作家、小林信彦氏が書いていた。

昭和7年生まれの作家の成長期は、戦中戦後の食糧難の時代と重なった。

良質のたんぱく質とカルシウムの摂取不足が、低身長の原因──という認識だろう。

体格のベースになるのは遺伝形質だが、栄養にも大きく支配される。

小林さんと同年のわれわれは、男も女も一体に小柄で、同窓会の会場でぽこっとへこんで見える一群は、わが級友たちだ。

育ち盛りに牛乳はおろか肉も卵もめったに拝めなかった結果が、それだ。

なかには長身の男もいるが、その彼も「おやじのほうが大きかった」と言う。

一般に父親よりも息子は背が高いのが普通だと思うが、そうではない者がわれわれには多い。

「戦中・戦後の粗食が、私の体に動脈硬化をつくらなかった」とは、われわれの親の世代に当たる日野原重明先生の言葉だが、おかげで子ども世代は成長が遅れた。

戦争後遺症の一種だろう。
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高貴幸齢者  [雑感小文]

 高貴幸齢者 


疎開児童も お爺(じい)さんになりました

疎開児童も お婆(ばあ)さんになりました

信じられない時の迅(はや)さ 

─茨木のり子の詩「疎開児童も」の冒頭のスタンザだ。

本当にそうだと思う。

「戦争が終った!」と、胸の底から突き上げてくる喜びを抑えきれず、夏草の茂る小道を歩いていた足がひとりでに走り出した中学1年生の自分と、こけおどしのような赤茶色の封筒で届いた「後期高齢者医療保険料額決定通知書」なるものに、苦い笑いを口辺に浮かべる老人の自分と、その間に飛び去った70年のなんと迅速だったことだろう。

「光陰矢のごとし」とはよく言ったものだ。むろん現実にはさまざまな転変があった。

親たちがいなくなり、恩を受けた先輩や心をゆるした友の何人かにも、もうこの世では会うことができない。

「そこは涼しい風が吹いていますか」と呼びかけてみたい。

「こっちはご存じのひどい暑さで、おれは相変わらず貧乏で、高貴幸齢者というものになりました」
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8月15日の記  [雑感小文]

8月15日の記 

数年前の8月15日、後期高齢の男たち数人が、仲間の一人の家に集まり、昭和20年のあの日の思い出を語り合った。

いまやあの日を体験的に知る日本人は、昭和ヒトケタ以上の年寄りばかりになったが、そのすべての人がめいめい自分自身の「昭和20年8月15日」の記憶をもっている。

70年も前の特定の1日を、親が死んだ日と同じように覚えている。

そんな日はほかにはないだろうと思う。

高見順などの日記にも明らかだが、あの日は日本全国、快晴でセミが鳴きしきっていた。旧制中学1年の夏休み中だった私は、郷里屋久島の山の中の小屋で暮らしていた。

なぜ山の中かというと、集落が米軍艦載機グラマンの空襲と、潜水艦の艦砲射撃を(各1回)受けたことにたまげて、村中こぞって山奥に「疎開」していたからだ。

戦争が終わったと聞き、ではもう安心だなと、山から村の家への道を歩いているうち、不意に胸の底から歓喜が突き上げてきた。

すると、足がひとりでに動き、夏草の茂る小道を全力で走り出していた。

それが私の昭和20年8月15日だ。
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戦争という疫病 [雑感小文]

 戦争という疫病

玉音のまぎれがちなる汗冷ゆる  加藤秋邨

昭和20年8月15日、戦争が終わった日の句だ。

この年、日本人の平均寿命は男性24歳、女性39歳だった─という説がある。

出所不明のいささか信憑性の疑われる数字ではあるが、心情的には大いに信じたい数字でもある。

昭和12年7月に始まった日中戦争から太平洋戦争へと続く8年間に、中国大陸で、南方の島々や海で、多くの兵士が戦病死した。

沖縄は全住民を巻き込む戦場となった。

広島と長崎には原子爆弾が落とされた。

東京が、大阪が、名古屋が、焦土と化した。国中の町が(ときには村さえも)空襲を受け、焼かれた。

そうしておびただしい人びとが死んだ。殺されたのだ。

「戦陣ニ死シ職域ニ殉ジ非命ニ斃(たお)レタル者及其ノ家族ニ想ヒヲ致セバ五内(ごだい)為ニ裂ク」と終戦の紹書に、ある。

戦争は、一方では物資と食糧の欠乏を招いた。

衛生状態が悪く、医療はととのわず、伝染病が流行した。

栄養が足りないから、結核のような消耗性の病気にかかると、ほとんどの人が健康を回復できなかった。

戦争中にへった病気はノイローゼと糖尿病ぐらいのものだ。

じつに戦争ほど国民の寿命を縮めるものはない。

戦争は大疫病だ。
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8月の詩 [雑感小文]

 8月の詩

炎天下、鎮魂の祈りをささげた「原爆の日」を経て迎える「終戦記念日」は、月遅れのお盆とも重なる。

「新年は、死んだ人をしのぶためにある」とは、中桐雅夫の詩句だが、8月は、戦火に命を奪われた人びとを国中で弔う月である。

石垣りんの詩を読んでいただこう。


弔詞

     職場新聞に掲載された一〇五名の
     戦没者名簿に寄せて


ここに書かれたひとつの名前から、一人の人が立ちあがる。


ああ あなたでしたね。

あなたも死んだのでしたね。


活字にすれば四つか五つ。その向こうにあるひとつのいのち。悲酸にとじられたひとりの人生。

たとえば海老原寿美子さん。長身で陽気な若い女性。一九四五年三月十日の大空襲に、母親と抱き合って、ドブの中で死んでいた、私の仲間。

あなたはいま、

どのような眠りを、

眠っているだろうか。

そして私はどのように、さめているというのか?


死者の記憶が遠ざかるとき

同じ速度で、死は私たちに近づく。

戦争が終って二十年、もうここに並んだ死者たちのことを覚えている人も職場に少ない。


死者は静かに立ちあがる。

さみしい笑顔で

この紙面から立ち去ろうとしている。忘却の方へ発とうとしている。


私は呼びかける。

西脇さん、

水町さん、

みんな、ここへ戻って下さい。

どのようにして戦争にまきこまれ、

どのようにして

死なねばならなかったか。

語って

下さい。


戦争の記憶が遠ざかるとき、

戦争がまた

私たちに近づく。

そうでなければ良い。


八月十五日。

眠っているのは私たち。

苦しみにさめているのは

あなたたち。

行かないで下さい 皆さん、どうかここに居て下さい。

(石垣りん詩集『表札など』=童話社刊より)

 

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食後の一睡 [医学・医療・雑感小文]

 食後の一睡

暑い!

いやはや、まったく、なんたる暑さだ。

「気象庁はなにしてるんだ! 少しは涼しくしたらどうなんだ!」

「バカなこと言うんじゃないの、甲子園やリオはもっと暑いのよ」

「いや、リオはいま“冬”なんだろう。でも、リオにも責任とってもらわんとなあ」

このところの夏ばての原因の半分は、リオにもある。

暑くて寝苦しいところへもってきて、オリンピックのテレビに時間を取られて寝不足に輪がかかる。

夏ばての最大の原因の一つは睡眠不足だ。

朝、「だるいなぁ、起きるのがしんどいなぁ」と感じたら睡眠不足の証拠。

そんな日の昼、頭がぼうーっとしてきたら、20分ばかり昼寝をするとよい。

いすにかけたままの居眠りでもけっこう効果的。スッキリする。

昔のことわざにも「食後の一睡、万病円(江戸時代、万病に効くといわれた丸薬)」とある。

そんな昼寝の効用、みなさま、よくご存じだ。

充電と言い聞かせてはする昼寝 西畑寿々子 

老いぬれば何は扨措(さてお)き昼寝かな 奥西邦夫
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