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日本発ネズミの貢献 [医学・医療・雑感小文]

 日本発ネズミ

 普通に飼っているうちにだんだん高血圧になってくる高血圧ネズミ(高血圧自然発症ラット)と、成長するにつれ高血圧になり、やがて脳卒中を起こす脳卒中ネズミ(脳卒中易発症ラット)は、高血圧と脳卒中の研究に画期的な進歩をもたらした。

 どちらも日本生まれのネズミたちだ。

 高血圧ネズミは、1960年代の初め、京都大学・病理学教室の岡本耕造教授らによって開発された。

 高食塩食で血圧が上がるネズミ同士を何代にもわたって交配させ、遺伝的に高血圧を発症するネズミの系統を作った。

 が、このネズミは脳卒中にはならなかった。

 ネズミの体を縛りつけて動けなくしたり、電灯の点滅や騒音にさらすなど強いストレスを与えた。

 すると血圧は即座に上がるのだが、脳卒中まではいかない。

 「ネズミは頭を使わんから脳卒中にはならんのかなぁ、とあきらめかけたころ、1匹が脳出血を起こしてくれました」と、脳卒中ラットの開発者として世界的に知られる家森幸男・京都大学名誉教授。

 1973年のことで、当時は岡本教室の助手だった。

 ネズミの恩恵

 家森幸男・京大名誉教授は、高血圧ネズミにストレスを加えて、脳卒中を起こしたネズミの子孫同士を掛け合わせるという選択交配を何代も重ねて、100%脳卒中を発症する遺伝因子をもつネズミの一族=脳卒中ラットを作り上げた。

 たいへんな根気と労力と時間のかかる仕事だった。

 今はそんな手間暇は要らない。

 特定の遺伝子を遺伝的に壊し(ノックアウト)、働けないようにすることで多種多様なネズミ(ノックアウトマウス)を作ることができる。

 ともあれ、そうしたネズミたちの恩恵を、現代の医学生物学がどれほどこうむっているか。

 脳卒中ラットでいえば、普通に飼育しているうちに必ず脳卒中を発症するから、脳卒中の原因の究明や予防の研究が思いのままできる。

 しかもネズミの寿命はせいぜい2年で、その9カ月から13カ月の間に脳卒中を起こしてくれる。

 人間では何十年もかかることが、短い観察期間で研究できる。

 むろんネズミに限らない。多くの実験動物のそうした命の集積が、人類を救うヒントを与えてくれている。
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