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糖尿病と「睡眠障害」 [医療小文]

糖尿病と「睡眠障害」は関連している 日本で最大規模の研究

 京都大学と長浜市が共同で行っている「ながはまコホート」の、世界最大規模の7,000人超を対象とした研究で、睡眠時間や睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)が肥満と相互に関連していることや、高血圧・2型糖尿病とも関連していることが明らかになった。

 研究では、一般の健診受診者の集団において、治療が望ましいと考えられる睡眠呼吸障害が成人男性では約4人に1人、閉経後女性では約10人に1人の割合でみられることが判明した。

 睡眠障害が高血圧や糖尿病のリスクに

 24時間休みなく活動している現代社会で、短時間睡眠は増加しており、日中の眠気だけでなく2型糖尿病や高血圧などとの関連が注目されている。

 また、睡眠呼吸障害の大部分を占める睡眠時無呼吸は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるだけでなく、高血圧、2型糖尿病、心血管障害発生とも関連することが知られている。

 短時間睡眠や睡眠呼吸障害は高血圧や糖尿病のリスクになると考えられている。

 睡眠に関する研究は多いが、アンケートを用いた自己申告の睡眠時間による報告がほとんどで、客観的な睡眠時間によるものは少ない。

 そこで京都大学の研究グループは、ながはまコホート事業に参加した7,000人以上を対象に、睡眠障害の程度と客観的な睡眠時間を測定した。

世界最大規模の7,000人超が参加した研究

 「ながはまコホート事業」は、市民の健康づくりと最先端の医学研究を目的に、京都大学と滋賀県長浜市が共同して行っている研究。

 5年ごとに一般の特定健診項目に加えて、遺伝子解析を含む血液検査や睡眠検査などのさまざまな検査を行っている。

 今回対象となったのは、2013~2016年にながはまコホート事業に参加した9,109人(92.5%)のうち、機器の持ち帰りに承諾し、そのうち活動度計で週末1日を含む5日以上の測定とパルスオキシメーターで2日以上の測定のデータが取得可能であった7,051人(全体の71.6%)。

 睡眠時間の客観的な評価のために腕時計型の加速度計と睡眠日誌を、睡眠呼吸障害の評価のためにパルスオキシメーターを用いて、前者は7日間、後者は4日間の測定を依頼した。

 研究グループは、同意が得られた参加者に対して機器の操作方法を説明し、参加者の測定意欲を高めかつ測定ミスを防ぐために、一人ずつ意義や測定方法を説明した。

閉経前女性では糖尿病リスクが28倍に上昇

 研究は、短時間睡眠と睡眠呼吸障害、肥満の3つの条件が、高血圧や2型糖尿病にどのように影響するかを解明するかを目的とした。

 また、睡眠呼吸障害のリスクは男女差、さらには閉経前後でも差があると考えられるため、女性の閉経を含めた性差についても検討した。

 その結果、客観的な睡眠時間に関しては性別や閉経前後であまり違いはみられなかったが、睡眠呼吸障害は明確な違いが認められ、特に治療対象となる中等症以上の睡眠呼吸障害の頻度は男性では23.7%と多いことが分かった。

 女性では閉経前は1.5%と少ないものの、閉経後では9.5%と頻度が高くなることが判明した。

 また、睡眠呼吸障害は男女とも高血圧に関連しており、その重症度が高くなるにつれて関連度が高くなりった。糖尿病に関しては、女性においてのみ関連していた。

 特に、閉経前女性においては、中等症以上の睡眠呼吸障害があると糖尿病が28倍と著明に多くなった。

糖尿病の治療に加えて睡眠障害の治療も必要

 研究では次のことが明らかになった――

(1)短時間睡眠が睡眠呼吸障害と関連している
 睡眠時間が短い人は睡眠呼吸障害がないか検査するのが有用である可能性がある。

(2)睡眠呼吸障害は高血圧、糖尿病の頻度の上昇と関連しており、さらに、性差が認められる
 治療すべき睡眠呼吸障害のある人は高血圧、糖尿病がないか検査するのが望ましい。
 特に閉経前女性の睡眠呼吸障害では糖尿病に注意する必要がある。

(3)肥満と高血圧、糖尿病との関連は睡眠呼吸障害が間接的に媒介している
 高血圧、糖尿病の基礎病態である肥満の治療としての減量以外に、睡眠呼吸障害の治療も加えて有用である可能性がある。

 なお、睡眠呼吸障害のほとんどが大きな鼾がみられる閉塞性睡眠時無呼吸とみられる。

 今回の研究は、客観的な睡眠時間、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)同時測定データを用いた世界で最大規模の研究結果だ。

 現在第3期のながはまコホート事業として、今回の研究の対象者の5年後の睡眠時間や睡眠呼吸障害の程度、高血圧や糖尿病の状態などを調査中だという。

 研究グループはこのデータを用いて、睡眠時間や睡眠呼吸障害のもともとの程度、あるいはそれらの変化が高血圧や糖尿病にもたらす影響を縦断的に解析し、因果関係について検討する予定としている。

 また、高血圧や糖尿病の参加者ではさらに頻度は高くなっているので、高血圧や糖尿病患者でいびきの大きい人や治療効果が乏しい人では、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)の検査も考慮する必要性が示された。

 肥満があれば肥満の克服が極めて重要だとしている。

 研究は、松本健・京都大学医学研究科客員研究員(大阪府済生会野江病院医長)、陳和夫・同特定教授、松田文彦・同教授らの研究グループによるもので、医学誌「SLEEP」オンライン版に発表された。

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睡眠と高血圧&糖尿病 [医療小文]

睡眠呼吸障害が高血圧、糖尿病と関連
世界最大規模の研究、客観データで確認

京都大学の研究グループと滋賀県長浜市が共同で進める「ながはまコホート」で、睡眠呼吸障害が高血圧に関連し、さらに女性では糖尿病とも関連していることが分かった。

睡眠呼吸障害に関するコホート研究はこれまでも行われてきたが、睡眠時間の測定にアンケートなど主観的データを使うことがほとんど。

今回の研究では加速度計を用いて客観的な睡眠時間を測定したことが特徴。

また、解析対象が7,000人以上と世界最大規模で行われた。

研究成果は、「Sleep」(2018年5月9日オンライン版)に掲載された。

短時間睡眠は高血圧、糖尿病と関連せず

ながはまコホートは、京都大学大学院呼吸器内科学客員研究員の松本健氏、同大学呼吸管理睡眠制御学特定教授の陳和夫氏らによる研究グループが長浜市と共同で行っている。

2013~16年に参加者に加速度計とパルスオキシメーターを貸し出し測定してもらう方法により、加速度計で週末1日を含む5日以上、パルスオキシメーターで2日以上の測定が可能だった7,051人(全体の71.6%)を解析対象にした。

睡眠時呼吸障害と短時間睡眠、肥満(BMI 25以上)の三者と高血圧、糖尿病との関係を解析した。
 
結果、治療対象と考えられる中等度以上の睡眠呼吸障害の頻度は、男性で23.7%、閉経前女性で1.5%、閉経後女性で9.5%だった。

この割合は諸外国とほぼ同程度であるという。

睡眠呼吸障害は男女ともに高血圧と関連していた。

糖尿病は、男性では関連がなく、女性では関連が見られた。

閉経前女性では、中等度以上の睡眠時呼吸障害があると糖尿病が28倍多かった。  

一方、肥満は男女ともに、高血圧、糖尿病と関連があった。

ただ、この関連性のうち約20%は睡眠呼吸障害を介しての関係だという。

なお、睡眠呼吸障害や肥満は重症度が高くなるほど睡眠時間が短くなっていた。

しかし短時間睡眠は高血圧や糖尿病と関連はしていなかった。
 
今回の成果は横断研究であるため因果関係にまで言及はできない。

このため第3期事業として、今回の対象者に関して5年後の測定データを収集している。

その上で縦断的に解析し因果関係を明らかにする方針。
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「もやもや病」って? [医療小文]

日本人に多いという「もやもや病」 いったいどういう病気?

シンガーソングライターの徳永英明さんは、2001年に「もやもや病」を発症したといいます。

翌年症状が落ち着いて歌手活動に復帰しましたが、2016年、もやもや病による脳梗塞発症予防のため手術をしました。

徳永さんのもやもや病との闘いは、この病気が一般の人に知られるきっかけとなりました。

もやもや病は、脳に血液を送る血管が徐々に詰まり、脳の血液不足や出血を起こす難病。

日本で最初に見つかった疾患です。

脳に血液を送っている血管で「内頚動脈(ないけいどうみゃく)」という太い2本の動脈があります。

内頚動脈は、心臓から出た大動脈から枝分かれし、首から頭へ上がってすぐに二股に分かれます。

左右の内頚動脈は、それぞれ左右の大脳半球へと走って酸素や栄養を送っています。

この内頚動脈の終末部にあたる二股に分かれる部分に狭窄(すぼまって狭くなる)や閉塞が起こるのが「もやもや病」です。

それとともに「側副血行路(そくふくけっこうろ)」という、大脳半球に血液を届けようと異常な血管が網の目のように形成されます。

側副血行路は「もやもや血管」とも呼ばれていますが、本来の太さ以上に拡張して多量の血液を送るので切れやすく、頭蓋骨のなかで出血を起こすこともあります。

もやもや病は血管が細くなると道路のロータリーのような血管の環状交差点ができます。

これを「ウィリス動脈輪」というため、もやもや病は別名「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれます。

日本に多い「もやもや病」

もやもや病は、1957年に東京大学の研究グループによって初めて報告されました。

その後、1960年代終わりに東北大学の研究グループ(鈴木二郎医師)によって「もやもや病」と命名されました。

当時の解像度の低い脳血管造影写真では、側副血行路(もやもや血管)がタバコの煙のように「もやもや」と見えたことから名づけられたといわれています。

現在では世界的に通用する正式名称となっており、英語では「Moyamoya disease(モヤモヤ・ディジーズ)」と表記します。

「もやもや病は、前述のとおり脳の血管が徐々に詰まってしまう病気ですが、加齢による動脈硬化の進行で脳が詰まるのとは違い、子どもや若い世代にも発症します。

現在、最も多く診断されているのは日本で、国内には16,000人ほど患者さんがいます。

韓国や台湾など東アジアや黄色人種に多い病気とされています(人口の多い中国では正確な統計がありません)

発症年齢は5歳ころと30~40歳ころの二回山があり、男女比は1:1.8で女性に多いという傾向がわかっています。

もやもや病の症状

もやもや病によって、内頚動脈や大脳半球の後半部に血液を送る「後大脳動脈(こうだいのうどうみゃく)」が狭くなる患者さんもいます。

こうして脳血管が詰まることで脳に血液不足が起こり、手足のまひや言語障害などを起こすのが「虚血型もやもや病」です。

また、側副血行路に長年負担がかかり続けて血管が切れ、脳出血を起こすタイプが「出血型もやもや病」です。

虚血型は小児に多く、出血型は成人の半数を占めています。

脳虚血

内頚動脈が細くなることで「もやもや血管」が発達しますが、それでも大脳は血液不足状態に陥ります。

そうすると「一過性脳虚血発作」や「脳梗塞」が起こります。

一過性脳虚血性発作は、手足が動かしにくい、手足や顔面がしびれる、うまくコトバが出ないなどの症状が突然起こり、数分から数時間で回復する症状です。

小児では過呼吸からこの発作が起こりやすいといわれています。

また、ラーメンやうどんなどを「フーフー」と吹き冷ましながら食べる、リコーダーやハーモニカを吹く、などの動作が引き金になったり、歌ったり大声を出したりすると発作が起こることもあります。

一過性で自然に治まりますが、脳梗塞の前兆発作という面も指摘されていますから要注意です。

脳梗塞

血液が不足して脳の一部が死んでしまうのが「脳梗塞」です。

起こった場所によって「手足の運動障害」「言語障害」といった症状が後遺症として残ります。

そして、もやもや病で起こる脳梗塞のきっかけは、側副血行路にかかる負担によって発症する「脳出血」です。

しかも、いったん出血すると何度も繰り返すようになることも指摘されています。

その他の症状

もやもや病の患者さんには頭痛を訴える人が多く、拍動性の痛みや吐き気をともなう場合もあります。

また、頻度は高くないのですが「ひきつけ(けいれん)」発作で検査を受けてもやもや病と診断されるケースもあります。

国立循環器病研究センター病院には、2012年から「もやもや病専門外来」が開設されました。

ほんの10年前までは原因がまったく不明の病気でしたが、日本がリードして研究を進め原因や検査、治療法などが解明されてきている疾患といえるでしょう。

<執筆 藤尾 薫子(保健師・看護師)
監修 株式会社 とらうべ
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電子たばこホントに安全か? [医療小文]

ニコチン入り電子たばこで脂肪肝の恐れ

電子たばこは、燃焼させた従来のたばこよりも毒性物質に曝露されない可能性が高い。

英国公衆衛生庁はたばこの喫煙よりも害が95%少ないと報告した。

だが、電子たばこの使用により脂肪肝になる可能性があることが、マウスを用いた実験から示唆された。

米・Charles R. Drew UniversityのTheodore C. Friedman氏らの研究グループが、第100回米国内分泌学会(ENDO 2018、3月17~20日、シカゴ)で発表した。

脂肪肝発症に関する433の遺伝子変異をマウスで確認

Friedman氏らは、電子たばこに含まれているニコチンが非アルコール性脂肪肝疾患に関係していると報告している。

一方で、電子たばこが肝疾患、糖尿病、心疾患、脳卒中に対して及ぼす長期的な影響については、まだ分かっていない。

同氏らは、アポリポ蛋白E遺伝子を持たず、心疾患や脂肪肝を発症しやすいマウスを用いて、12週にわたる実験を行った。

マウスには、脂質およびコレステロールが比較的高い餌を与えた。

1つの群では、マウスをチャンバー内に入れ、血中ニコチンレベルが喫煙者および電子たばこ使用者と同程度になるまで電子たばこのエアロゾルに曝露させた。

別の群では、マウスを生理食塩水のエアロゾルに曝露させた。

その後、両群のマウスの肝臓サンプルを採取し、RNAシークエンスを用いて肝臓の遺伝子を解析し、電子たばこによる影響を検討した。

その結果、電子たばこに曝露されたマウスにおける脂肪肝の発症や進行に関係する433の遺伝子変異が見いだされた。

さらに、同マウスにおいて、概日リズム(体内時計)に関係する遺伝子変異も発見。概日リズムは、脂肪肝を含む肝疾患の発症を促進することが分かっている。

同氏は「電子たばこの人気は、従来のたばこよりも安全であるという広告によって急速に拡大している。

しかし、脂肪肝は健康に害を及ぼす可能性が高いため、われわれは電子たばこは消費者に宣伝されているほど安全ではないと結論している。

今回の研究結果は、政策立案者や連邦政府、州の規制当局が電子たばこの使用増加を防ぐ措置を講じる上で役に立つだろう」と述べた。
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水泳中のトラブル [雑感小文]

耳の中に水

〝寝耳に水〟ならぬ水泳中の耳の中に水が入って、溺れることがある。

 耳の穴や鼻から入った水が、中耳を圧迫し、その影響が内耳に及び、めまいや平衡感覚の失調を誘発するためだ。

 水が中耳腔(中耳の中)に入る経路は、外耳道(耳の穴)からと、耳管(中耳腔とのどの上部を連絡する管)からの二つがある。

 浸水を防ぐには耳栓をつけ、鼻から入った水を口から出すようにする。

 鼻をかんで水を出すときは、片方ずつかむ。両方同時に押さえて鼻をかむと、水が耳管のほうへ行ってしまう。

 もし、水泳中にめまいが起こっても、それで死ぬようなことは絶対ないのだからあわてないこと。

 顔を水面に出し、ふわっと水に浮いていることができれば、しだいに治まる。

 それができなくても、落ち着いて周りの人に救助を求めよう。

 こむら返りが起こったときも、やはり最も肝心なことはあわてないこと。

 焦らず落ち着いて、まず息をいっぱい吸い込み、それから顔を水中につけ、丸くなって体を浮かす。

 けいれんしている筋肉をしっかりつかみ、ゆっくりともみほぐす。これで、たいていうまくいく。

 わたしも昔――つまり若いころ(と、こう断らなければならないのは、ちとシャクだが)、一度、経験したことがある。

 むろん大丈夫だった。
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太宰治と「男の汗」 [雑感小文]

「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるようね」

「それじゃ、お前はどこだ。内股かね?」

「お上品なお父さんですこと」

「いや、何もお前、医学的な話じゃないか。上品も下品もない」

「私はね、この、お乳とお乳のあいだに、......涙の谷、......」

 太宰治の小説『桜桃』のなかの夫婦の会話だ。

 暑い日、最もよく汗をかくところは頭、額、鼻、背中など。特に頭は大汗をかく。
 
 夏の盛りには毎日、頭を洗ったほうがよい。汗臭さは香水などでは消せないからだ。

 頭皮は整髪料なども加わって脂分が多いので、雑菌も繁殖しやすく、異臭を放ちやすい。

 そこへもってきて、暑くなると、脂腺の働きも活発になる。

 男性ホルモンは脂成分の分泌を促す作用をする。

 だから男性にはいったいに脂症の人が多い。

 脂が額や鼻に浮き出て、いわゆる脂ぎった顔になる。

 これは普通の汗(水分が99%を占める)と違って汚れやすく、皮膚炎の原因にもなる。

 男の洗顔は、女性と違って、あとの手間ひまがかからない。

 夏場はまめに顔を洗うべし。
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高村光太郎の「歩け、歩け」 [医療小文]

寒くなく暑くなく、戸外を歩くには絶好の季節だ。

ウォーキングは気軽にできる運動不足解消法─というより最上の健康法だ。

天気のいい休日には家族そろって風薫る緑の山野を歩き、小鳥のさえずりに耳を傾け、林に座って日の光におどる若葉を見上げてみよう。

家でゴロ寝をして疲れをいやすのもよいが、山野を歩いて疲れをとる方法もある。

長年、いろいろな病気の専門医に取材して記事をつくってきたが、本題の話がおわったあと、先生ご自身の健康法をたずねると、ほとんどの医師が異口同音に「歩くこと」と答える。

なかにはビルの10階くらいまではエレベーターには乗らない、と豪語した先生もおられる。

新聞でこんな記事を読んだ。

週に2、3回、「ゆっくりまたは平均的」ペースで1~2時間、ジョギングする習慣がある人は、そうでない人に比べて、寿命が男性で6.2年、女性で6.9年、延びた。

そんな調査結果を、デンマークの研究チームが、欧州心臓学会で発表した。

発表したピーター・シュノール医師は、

「ほどほどにジョギングする人の死亡率は、習慣がない人や走り過ぎる人より低く、飲酒量と死亡率の関係に似ている」とコメントしている。

コメント中の「ジョギング」は「ウォーキング」と言い換えることができるし、記事の見出し、

「ゆるジョグ」で長生き? の、?はいらない──と思った。

足の老化を防ぐことは、体だけでなく、頭の老化を防ぐ効果もある。

歩いたり走ったりするとき、下半身の骨格筋にある緊張筋がいっせいに収縮して、脳細胞を刺激するからだ。

高齢でも足の丈夫な人は、頭もしっかりしている。

「強い足には冴(さ)えた頭脳が宿る」ということわざもある。

背筋を伸ばし、あごを引いて、一歩、一歩、しっかりと......。

姿勢がいいと若く見える。

歩け歩け歩け歩け
南へ北へ
歩け歩け東へ西へ
歩け歩け道ある道も
歩け歩け道無き道も 
歩け歩け
(「歩くうた」作詞 高村光太郎 作曲 飯田信夫)

昭和16年(1941年)5月にレコード発売された「戦時歌謡」である。
この年12月8日、米英相手の太平洋戦争が始まった。
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脳は時なり [医療小文]

 冬場に脳卒中が多発するのはよく知られているが、夏も油断できないと、脳卒中の権威、山口武典・日本脳卒中協会理事長(国立循環器病研究センター名誉総長)が警告している。

 夏に突然死、急性死が多発するのは、汗を多くかくため血液の粘稠度(ねんちゅうど=粘って濃くなる度合い)が増すためと、過労になりがちなためだろう。

 脳卒中には、脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血と、三つの病型がある。

 脳内の血管が破れる脳出血と血管が詰まる脳梗塞は、生活習慣病をバックにして起こる兄弟のような関係の病気だが、クモ膜下出血は、生活習慣とは直接の関係はなく、もともと脳の中にあったコブ(脳動脈瘤)が破裂する病気だ。

 昔の日本人の脳卒中といえば、たいてい脳出血(当時は脳溢血といった)だったが、今は脳梗塞が7割を占める。

 夏場の発症が多いのも脳梗塞のほうだ。

 高齢者は、温度に対する適応能力が下がるが、循環器系にその影響が現れやすい。

 夏の暑さで発汗し、脱水状態が起き、血液が濃縮されると、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞を招きやすい。

 また、血液の量も減るため、毛細血管を含む微小血管の領域では局所的な虚血(血液不足)が起こりやすくなる。

 例えば、炎天下でのゴルフの後にクラブハウスで倒れた例、夏風邪で寝込んでしまったが、単身赴任でほとんど食事がとれず、脱水を生じ発症した例など、夏の脳梗塞は脱水が引き金になったケースが多い。

 夏はなるべく多く水分をとったほうがよい。

 人は寝ているときにも汗をかくが、夏の夜は汗の量が増えるので、翌朝、脳梗塞を起こしやすい。

 夜中にトイレに起きたくないからと、夜は水を飲むのをひかえる人が多いようだが、夏場は「夜寝る前にコップ一杯、朝起きたら一杯飲みなさい」と、山口先生。

 脳卒中の予防は、まず正しい生活習慣だ。

 食べすぎ、(酒の)飲みすぎ、(たばこの)吸いすぎ、働きすぎ(のストレス)、怠けすぎ(の運動不足)の「五すぎ」が重なると、高血圧、糖尿病、脂質異常症(血液中の悪玉コレステロールのLDLと、中性脂肪が異常に多く、善玉のHDLが少ない状態)などを招いて脳卒中になりやすい。

 脳梗塞の発症を防ぐには、前ぶれのTIA(一過性脳虚血発作)を見逃さず、きちんと対処すること。

 TIAとは、脳の血液循環が一時的に悪くなったために起こる、軽い脳梗塞のような症状だ。

 いちばん多い症状は、顔面を含む体の片側の運動障害だ。

 手足に力が入らない、片側の顔面や手足のしびれ感、ろれつが回りにくくなる...といった症状が出るが、たいていは十数分以内、長くても24時間以内に自然に回復する。

 そこで安心してはいけない。

 TIAは脳梗塞が起りかけている警戒警報なのだ。すぐ循環器内科を受診しよう。

 万一、脳梗塞で倒れたら、一刻も早く脳卒中センター機能をもつ病院へ─。

 脳梗塞の治癒率を飛躍的に高めた薬、t-PAは、発症後4時間以内に投与しなければ効果が期待できない。

 Brain is time(脳は時なり)─アメリカの脳卒中キャンペーンの標語だ。
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お茶をどうぞ! [医療小文]

「京都人は色が白くなるとさえ言ったら、どんな草でも喜んで食べる」

 とは、明治・大正の詩人にして卓抜なコラムニストだった薄田泣菫の警句だ。(完本『茶話』富山房百科文庫所収)

 現代女性はやせるとさえ言えば、どんな草でも喜んで食べるし、現代人はがんにならないとさえ言えば、どんな物でも好んで食べる──ようなところがある。

 お茶はこの二つの条件にかなう飲み物だ。

 ご期待に応えてか、〝食べるお茶〟というのもある。

 お茶が肥満防止にいいのは、成分の一つのサポニンに体内での脂肪の吸収を抑える作用があり、カフェインが脂肪細胞にたまった脂肪の分解を促進させるからのようだ。

 熊本県立大学の奥田拓道教授(食・健康環境学)らが実験で確かめた。

 がんについてはじつに多くの研究報告がある。

 緑茶の生産地でいろいろながんの発生率が低いことはかなり以前から知られていた。

 緑茶のカテキン類はがん細胞のアポトーシス(自滅)を促進させるというので、アメリカでは緑茶を治療薬として使う臨床試験も行われているそうだ。

 注=細胞の死には、アポトーシス(自然死)と、ネクローシス(壊死)の二つのパターンがある。

 アポトーシスは、個体をよりよい状態に保つために管理・調節された生理的な細胞死。

 がん化した細胞や内部に異常を起こした細胞のほとんどは、アポトーシスによって取り除かれ、腫瘍の成長が未然に防がれる。

 ネクローシスは、血行不良、外傷などによる細胞内外の環境に悪化によって起こる病理的な細胞死だ。

 緑茶やコーヒーをよく飲む人は糖尿病にもなりにくい。

 大阪大学の磯博康教授(公衆衛生学)らによる文部科学文科省研究班が、全国の40~65歳の男女約1万8000人に飲食習慣などを聞き、5年間追跡調査した結果だ。

 緑茶を1日6杯以上飲む人は週1杯未満の人に比べて糖尿病の発症リスクが33%減っていた。

 コーヒーを1日3杯以上飲む人も、週1杯未満の人に比べ42%減だった。

 カフェインの効果だろうと考えられている。

 ただし、一つ注意したいのは、コーヒーに砂糖を入れると逆効果になること。

 そうした気づかいが要らないのが、緑茶の大きな利点だ。

 欧米人の砂糖消費量が日本人よりはるかに多く、肥満や動脈硬化性の病気の発症率が高い一因は、日常飲料のコーヒーや紅茶に砂糖やミルクを加えることだといわれる。

 折から新茶の季節。

 急須に少し多めに茶葉を入れ、少し待ってつぐと、茶わんに緑色の光がみちる。

 さわやかな香りが立ちのぼる。法悦のひととき...。

 おーい、お茶...が、入ったぞ!

 しづくまで等分にして新茶のむ  佐橋節子
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水の話を一席 [雑感小文]

 明治34年春、盛岡の中学校を卒業して仙台の高等学校に入学することになった金田一京助を送る短歌会が、同窓の文学青年10名ほどで開かれた。

 後年『銭形平次捕物控』の作家となる1年下級生の野村長一(胡堂)や、2年下の石川一(啄木)もそのなかにいた。

 席題は「藤10首、水10首」だったが、互選のさい、みんなの笑いを誘った歌があった。

 だれもが回ってきたその歌を読むなり、「くすりと笑い、はては、畳の上へ引っくり返って腹のそこからあはあは」と笑った。

 あめつちの酸素の神の恋成りて 水素は終(つい)に水となりにけり

「その歌の主は実に石川君だった」と、金田一京助が著書『石川啄木』に書いている。

 水は、「泉からわき川を流れ海にたたえられたり、雨となって降って来たりする、冷たい液体。

化学的には水素と酸素の化合物としてとらえられる。

 きれいなものは無色透明で飲料に適し、生物の生存に不可欠」と、金田一京助の名が編者の筆頭に挙げられた『新明解国語辞典』には、ある。

「水は副作用のないすばらしい万能薬だ」とは、シモン・バルークという米国の生理学者の言葉。

 鎮静剤、解熱剤、利尿剤、強壮剤、催眠剤として、おだやかで確かな効果が水にはあると言っている。

 朝、起きぬけに水を飲めば、

①目覚めがよくなる。
②食欲が出る。
③便通を促す。
④水の味で体調がわかる(健康状態がよければ水がうまく、体になにか異常があるときは水がうまくない)など、いろいろ効果がある。

 1日3回、コップ1杯の水を飲みほす「水飲み健康法」を勧めるのは、川畑愛義・京都大学名誉教授。

 水には精神の鎮静作用があるから、イライラしたときなど水をゆっくりと飲めば気持ちのたかぶりが静まる。

 昭和の名人、古今亭志ん生がひどい貧乏暮らしをしていたころ、家族のだれかが風邪かなにかで寝込んでしまった。

 医者を呼ぶどころか売薬を買う金もない。閉口した志ん生は言ったそうだ。

「水でも飲んでみな。病気もちったぁ薄まるだろ」
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